【医師監修】糖尿病と歯周病の関係とは?予防する方法は?
糖尿病は、生活習慣病の代名詞ともいえる病気で、40歳以降で増え始め、60歳以上になると多くの方が発症しています。
これと同じような傾向にある病気として、歯周病が挙げられます。歯周病も40歳以降で顕著に増え始める病気なので、中高年の方は予防したいと考えていることかと思います。厄介なことに糖尿病と歯周病には密接な関係があるため、どちらかを発症するともう片方の発症リスクも高くなる点に注意が必要です。
そこでこの記事では、糖尿病と歯周病の関係や注意すべき口腔ケア、両疾患の予防に役立つ食事や生活習慣について解説をします。
目次
① 糖尿病と歯周病の密接な関係

糖尿病と歯周病には、負の相互作用があります。それは次のような理由からです。
1. 糖尿病になると免疫力が低下する
糖尿病は、インスリンの作用が低下する、あるいはインスリンの分泌量が少なくなることで、血糖値が高くなる病気です。
これ自体は歯周病と直接的な関係はないのですが、高血糖の状態が続くと、血管が脆くなったり、血流が悪くなったりします。
その結果、全身の免疫力が下がって細菌感染を起こしやすくなるのです。歯周病は細菌感染症の一種であるため、糖尿病によって末梢組織(歯ぐき)の血流が悪くなり、免疫力が低下すると、発症リスクも自ずと高くなります。
しかも糖尿病では唾液の分泌量が少なくなってお口の中が乾燥することから、より一層、歯周病菌の活動が活性化しやすい状況へと移行していきます。
2. 歯周病になると血糖値が下がりにくくなる
歯周病の主な症状は、歯ぐきの腫れや出血、顎の骨の破壊ですが、放置していると歯周ポケットの中で異常繁殖した細菌が血管に侵入し、血液中に内毒素を放出します。
それによって炎症に関わるサイトカインの血中濃度が高まり、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの効果を邪魔してしまいます。
つまり、歯周病菌の影響で血糖値が下がりにくくなり、糖尿病の発症リスクが高まる、あるいは症状が増悪するのです。
3. 治療にも相互作用が認められる
このように、糖尿病を発症すると歯周病にかかりやすくなり、歯周病を発症すると糖尿病にかかりやすくなるという厄介な相互作用が見られますが、治療を行うことで正の相互作用も期待できます。
例えば、内科で糖尿病治療をしっかり受けることで、末梢の血流がよくなり、唾液分泌量も増えていくため、歯周病の改善も期待できるでしょう。ですから糖尿病と歯周病の両方を発症した方は、それぞれの治療を専門の医療機関で受けることが推奨されます。
② 糖尿病患者が注意すべき口腔ケア

糖尿病患者さんは、血流の悪化や免疫力の低下、自然治癒力の低下などが見られるため、歯周病だけを患っている患者様より歯ぐきの状態が悪くなりがちです。
例えば、硬い歯ブラシでゴシゴシとブラッシングすると、歯ぐきを大きく傷つける恐れがあることから、やわらかめの歯ブラシでやさしく磨くようにしましょう。
同時に、歯周病菌による攻撃を受けやすくもなっているので、歯と歯の間の汚れはデンタルフロスを活用し、歯と歯ぐきの境目の汚れは歯ブラシを斜め45度に傾けて清掃する必要があります。
こうしてプラークフリーな状態を作ることができれば、糖尿病患者さんでも歯周病の予防や症状の悪化を防ぎやすくなります。
定期検診の重要性について
ただし、糖尿病患者さんがご自身で歯周病を完全に予防することはとても難しいため、歯科医院での定期検診を3~4か月に1回は受けてください。ご自宅での口腔ケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを両立させることで、歯周病はもちろん、糖尿病の悪化も防ぎやすくなります。
③ 両疾患の予防となる食事や生活習慣

糖尿病と歯周病を積極的に予防したい方は、以下のポイントに留意して食事や生活習慣を改善していきましょう。
1. 血糖値の上がりにくい食生活
糖質を控え、食物繊維やタンパク質が豊富な食事を取ることで、食後の血糖値が上がりにくくなり、糖尿病の発症リスクを低減できます。
2. ストレスや疲れが溜まりにくい生活サイクル
ストレスや疲労、睡眠不足は糖尿病と歯周病の両方のリスクを高めることから、これらを回避できるような生活サイクルに切り替えましょう。
3. 正しい口腔ケア習慣を身につける
歯磨きをするタイミングや回数、時間などに配慮した正しい口腔ケア習慣を身につけましょう。お口の中に歯垢がないプラークフリーな状態を1日1回でも作ることができれば、歯周病のリスクが大幅に減少し、ひいては糖尿病予防にもつながります。
ちなみに、正しい歯磨きの仕方、口腔ケアの方法は、3~4か月に1回受診する定期検診で学ぶことが可能です。
④ 当院の特徴

糖尿病と歯周病は、互いに悪影響を及ぼし合う密接な関係にあります。だからこそ、両方の疾患を深く理解し、患者様一人ひとりの全身状態まで考慮した歯科治療が不可欠です。
当院では、糖尿病をお持ちの方や、将来の健康に不安を感じる方が安心して治療を受けられるよう、以下の特徴を備えています。
1. 全身の健康を考慮した歯周病治療
院長は大学病院の歯科口腔外科での勤務経験があり、お口の中だけでなく、全身疾患と歯科治療の関係性についても深い知識を持っています。
糖尿病が歯周病に与える影響、また歯周病が血糖コントロールに及ぼす影響を熟知しているため、患者様の体調や治療状況をきめ細かくヒアリングしながら、最適な治療計画をご提案します。
必要に応じて、かかりつけ医と連携(医科歯科連携)を図りながら治療を進めることも可能ですので、お気軽にご相談ください。
2. 専門的な予防プログラムとメンテナンス
糖尿病患者様は免疫力が低下しやすく、歯周病が進行しやすい傾向にあります。
そのため、治療後の再発を防ぎ、健康な状態を維持するための「プロフェッショナルケア」が極めて重要です。
当院では、通常のクリーニングに加え、歯石を徹底的に除去する「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」や、専門の機械で細菌の巣(バイオフィルム)を破壊する「PMTC」など、専門的な予防処置に力を入れています。ブログ本文でも触れた通り、3~4ヶ月に一度の定期的なメンテナンスで、お口と体の健康を末永くサポートします。
3. 「食べる喜び」を守るための多角的なアプローチ
当院は「いつまでもおいしく食べる幸せ」をサポートすることを理念としています。
これは、歯周病治療だけでなく、院長が提唱する「食育」のアドバイスにも繋がっています。血糖値が上がりにくい食事の摂り方や、歯と体の健康を考えた食生活について、歯科医師の視点から具体的なアドバイスを行います。
また、糖尿病の合併症などで通院が困難になった方のために訪問歯科診療も行っております。ご自宅や施設でも、質の高い口腔ケアや入れ歯の調整を受けていただくことが可能です。お口の健康管理をあきらめる必要はありません。
⑤ よくある質問

Q. 糖尿病と診断されました。まず歯医者で何をすれば良いですか?
A. まずは、お口の状態を正確に把握するために、できるだけ早く歯科検診を受けてください。糖尿病であることを必ず歯科医師にお伝えいただき、普段服用しているお薬があれば「お薬手帳」をご持参ください。自覚症状がなくても歯周病が静かに進行している可能性があるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
Q. 歯周病の治療は痛みを伴いますか?
A. 歯ぐきが腫れている場合、歯石取り(スケーリング)の際に多少の痛みや出血を伴うことがあります。しかし、当院では患者様の負担を最小限に抑えるよう、丁寧な処置を心がけています。歯周ポケットの深い部分を清掃する際には、麻酔を使用することも可能ですので、痛みが不安な方は遠慮なくお申し付けください。
Q. 糖尿病患者の歯周病治療にも健康保険は適用されますか?
A. はい、適用されます。歯周病の検査、歯石除去、SRP(スケーリング・ルートプレーニング)といった一連の基本的な治療は、すべて健康保険の範囲内で行うことができます。特別な材料を使用する場合や、審美性を追求する治療については別途費用がかかることがありますが、その際は必ず事前にご説明いたします。
Q. なぜ3~4ヶ月に1回の定期検診が必要なのですか?
A. 糖尿病をお持ちの方は、唾液の分泌が減ってお口が乾きやすくなったり、免疫力が低下したりするため、歯周病菌が繁殖しやすい状態にあります。そのため、健康な方に比べて歯垢や歯石が再付着しやすく、歯周病が再発・悪化するリスクが高いのです。プロの手で定期的に細菌を取り除き、良い状態を維持するために、3~4ヶ月に一度のメンテナンスを推奨しています。これは、ご自身の血糖コントロールを安定させる上でも非常に有効です。
Q. 歯周病治療をしていることを、内科の主治医にも伝えた方が良いですか?
A. はい、ぜひお伝えください。歯周病の治療によってお口の炎症が改善すると、インスリンが効きやすい状態になり、血糖値の改善が期待できることが多くの研究でわかっています。内科の主治医にお口の状態を共有することで、より効果的な糖尿病治療に繋がる可能性があります。当院から情報提供書をお渡しすることも可能ですので、ご希望の場合はお声がけください。
⑥ まとめ

今回は、糖尿病と歯周病の関係と両疾患を予防する方法について解説しました。
糖尿病は高血糖の状態が続いて血管が脆くなり、血流も悪くなって免疫力が低下する病気で、末梢組織で発症する歯周病に強い影響を与えます。歯周病菌が血流に乗ると血糖値を下げるインスリンの作用が減弱し、糖尿病のリスクが高まることから、両者には負の相互作用が見られるのです。
食事や生活習慣を改めることで、この2つの病気を予防しやすくなりますので、皆さんも積極的に取り組んでいきましょう。