【医師監修】クレンチング症候群とは?原因や治す方法を解説
「寝ている間に歯を強く噛みしめている」と家族から指摘されたことはありませんか?
もしかすると、それは「クレンチング症候群」と呼ばれる状態かもしれません。
歯ぎしりのように音を立てず、静かに強く噛み続けるのが特徴で、気づかないうちに歯や顎、筋肉に大きな負担をかけています。
放置すると歯の欠けや痛み、顎関節症などのトラブルにつながることも。
今回は、クレンチング症候群の原因や症状、予防・治療法までを歯科医師の視点で解説します。
目次
クレンチング症候群の原因とリスク要因

はじめに、クレンチング症候群の特徴と原因、発症リスクを高める要因を紹介します。
クレンチング症候群とは
クレンチングとは、無意識のうちに強く歯を食いしばる行為を指します。
歯ぎしり(グラインディング)のように横方向の動きはなく、垂直方向に強く噛み込むのが特徴です。
日中の作業中や睡眠中に起こりやすく、本人が自覚しづらい点が厄介です。
主な原因
精神的ストレス:
最も多い要因がストレスや緊張です。
仕事のプレッシャーや人間関係の不安を抱えると、無意識に筋肉がこわばり、歯を噛みしめてしまいます。
かみ合わせのズレ:
歯並びや詰め物の高さがわずかに合っていないと、かみ合わせのバランスを取ろうとしてクレンチングを起こすことがあります。
姿勢や筋肉の緊張:
長時間のデスクワークや猫背姿勢が続くと、首や肩、咬筋(こうきん)などの筋肉が緊張しやすく、噛みしめが起こりやすくなります。
日常の癖・習慣:
集中時に歯を食いしばる、スポーツで力む、ガムを長時間噛むなどの癖も要因になります。
リスクを高める人の特徴
- デスクワークが多く、長時間同じ姿勢をとる
- 睡眠の質が悪い、または不規則な生活
- 精神的なストレスを抱えやすい
- 過去に顎関節症や咬筋の痛みを経験したことがある
こうした要素が重なると、クレンチング症候群を発症するリスクが高まります。
クレンチング症候群の症状と自己診断

次に、クレンチング症候群の主な症状と患者様がご自身でチェックできる項目を紹介します。
よく見られる症状
顎の疲れや違和感:
朝起きたときに「顎がこわばっている」「だるい」と感じたら、夜間の噛みしめが疑われます。
歯のすり減り・欠け:
強い力が加わり続けることで、歯の表面(エナメル質)が削られ、知覚過敏や歯の破折につながります。
肩こり・頭痛:
噛みしめで顔や首の筋肉が緊張し、肩やこめかみの痛み、頭痛を引き起こすことがあります。
歯ぐきの炎症や歯の揺れ:
歯周組織に強い力が加わるため、歯ぐきの腫れや歯の動揺が見られることもあります。
セルフチェックリスト
次の項目のうち、複数当てはまる場合は要注意です。
- 起床時に顎が重い、疲れている
- 歯がしみたり、欠けたりした経験がある
- 歯科で「歯がすり減っている」と指摘された
- 肩こりや首のこりが続いている
- 集中時に歯を噛みしめていることがある
- 顎の関節がカクッと鳴る
- 就寝前に緊張やストレスを感じることが多い
これらの症状が複数当てはまる場合は、早めに歯科医院で相談することをおすすめします。
クレンチング症候群の予防と治療法

最後に、クレンチング症候群を効果的に予防する方法や治療する方法を紹介します。
ナイトガード(マウスピース)の使用
睡眠中に装着するマウスピースは、歯と歯の間を保護し、過剰な噛みしめによるダメージを防ぎます。
保険で作製できることも多く、最も一般的な対策法です。
ボトックス治療による筋緊張の緩和
咬筋にボトックスを注射して筋肉の働きを一時的に弱め、噛みしめの力を減らします。
顎のだるさやこわばりが和らぐケースもありますが、数か月で効果が切れるため、医師の管理のもとで継続的に行う必要があります。
かみ合わせの調整
被せ物や詰め物の高さが原因でかみ合わせが乱れている場合は、咬合紙などで確認しながら適切に調整を行います。
生活習慣の改善ポイント
ストレスコントロール:
軽い運動や深呼吸、趣味の時間を取り入れてリラックスする
歯を離す意識:
日中は「上下の歯を離す」を意識し、アラームやメモで注意を促す
姿勢の改善:
猫背を正し、肩・首・顎に負担をかけない姿勢を意識する
快適な睡眠環境:
枕の高さや寝具を見直し、リラックスできる睡眠を確保する
定期的な歯科受診で早期発見:
定期的に検診を受けることで、歯の摩耗やかみ合わせの異常を早期に確認できます。
クレンチングは「完全に治す」よりも「うまくコントロールして再発を防ぐ」ことが重要です。
当院におけるクレンチング症候群への取り組み

クレンチング症候群は診断が難しく、原因も多岐にわたります。
当院では、口腔外科・予防歯科の専門知識と先進的な設備を活用し、患者様の症状に合わせた総合的なコントロールプランをご提供します。
専門的な診断による正確な原因究明
無意識の噛みしめによる歯や顎へのダメージを正確に評価するため、精密な診断を行っています。
- 歯科用CTによる多角的な分析:
当院導入のモリタ製「VeraviewX800」を活用し、歯の摩耗度合い、顎関節の状態、および噛み合わせに影響を与える骨格の微妙なズレを立体的に把握します。
これにより、噛みしめが顎関節症にまで進行していないかを確実に診断します。
- 口腔外科の専門的知見
大阪大学歯学部出身の院長は、顎関節や口腔外科領域の症状に対する豊富な知識を持っています。
単なる歯の摩耗としてではなく、筋肉、神経、関節の連動を考慮した多角的なアプローチで、クレンチングの根本原因を追究します。
幅広い選択肢を提供する総合治療
患者様の症状や希望に応じ、最も効果的で負担の少ない治療法をご提案します。
- カスタムメイドのナイトガード作製
精密な型取りに基づいたカスタムメイドのマウスピース(ナイトガード)を作製し、睡眠中の強力な噛みしめから歯と顎関節を保護します。保険診療での対応も可能です。
- 薬物療法と筋弛緩アプローチ
強い痛みや咬筋の過度な緊張が見られる場合、一時的に症状を緩和するために鎮痛薬や筋弛緩薬を併用します。
また、ご希望に応じて、ボツリヌス製剤を用いた咬筋の緊張緩和治療もご提案可能です。
これにより、噛みしめる力を効果的に弱めます。(※ボツリヌス製剤の使用は自費診療となります。)
- かみ合わせの精密調整
不適切な詰め物や被せ物による噛み合わせのズレが原因の場合は、咬合紙などを用いてミリ単位での精密な調整を行い、噛み合わせのバランスを整えます。
予防歯科を基盤とした再発防止のサポート
クレンチング症候群は再発しやすいため、「コントロール」が重要です。
- 生活習慣改善とセルフケア指導
噛みしめは日中の癖や姿勢、ストレスに大きく影響されるため、「上下の歯を離す習慣」や「顎をリラックスさせるストレッチ」など、日常生活で取り組める具体的な指導を行います。
- 口元と全身のリラックス
審美治療の一環として導入している美容HIFUや、ヒアルロン酸などを用いた口元の筋肉の緊張緩和治療も、クレンチングによる顔面への負荷を軽減するサポートとなり得ます。
(※これらの治療は自費診療となります。)
よくある質問

Q1. クレンチング症候群の治療は、保険が適用されますか?
A. はい、多くの場合で保険が適用されます。
クレンチング症候群や顎関節症と診断された場合、ナイトガード(マウスピース)の作製、診断のための検査(レントゲンなど)、薬物療法(痛み止めなど)、およびかみ合わせの調整といった基本的な治療は保険診療の対象となります。
ただし、ボツリヌス製剤を用いた咬筋の緊張緩和治療や、美容HIFUなど、審美・美容的な側面を持つ治療を選択される場合は自費診療となります。
Q2. ナイトガード(マウスピース)は、どれくらいで効果が出ますか?
A. ナイトガードは、主に歯の保護と顎関節への負担軽減を目的としています。
即効性:
装着初日から、朝起きたときの顎の痛みやこわばりの軽減を実感される方が多いです。
これは、ナイトガードが歯と歯の直接的な接触を防ぎ、噛みしめの力を分散するためです。
長期的な効果:
咬筋の慢性的な緊張や顎関節の炎症が治まるまでには、数週間~数ヶ月の継続的な装着が必要です。
マウスピースは「治療」ではなく「コントロール・保護」が主目的であるため、再発を防ぐためにも、症状が改善した後も継続的な使用が推奨されます。
Q3. 歯ぎしり(グラインディング)とクレンチング症候群の違いは何ですか?
A. 主に「力の方向」と「音」が異なります。
| 特徴 | グラインディング(歯ぎしり) | クレンチング症候群 |
| 力の方向 | 横方向(歯をすり合わせる) | 垂直方向(歯を強く噛みしめる) |
| 音の有無 | 音が出る(ギリギリ、ギーという音) | 音が出ない(サイレントクラック) |
| 自覚の難易度 | 家族に指摘されやすい | 本人が気づきにくい(日中も起こるため) |
クレンチングは音が出ないため、自覚のないまま歯や顎に深刻なダメージを与えているケースが多く、「朝の顎のだるさ」 や 「原因不明の頭痛・肩こり」 が最大のサインとなります。
Q4. クレンチングは、根本的に「完治」できますか?
A. クレンチング症候群は、ストレスや姿勢といった生活習慣に深く根ざした無意識の癖であるため、薬で治すような完治は難しいとされています。
しかし、歯科治療を通じて症状をコントロールし、ダメージを最小限に抑えることは可能です。
- ナイトガードで物理的なダメージを防ぐ
- ボトックスなどで咬筋の緊張を緩和する
- 日中のセルフケア指導で噛みしめの頻度を下げる
これらの複合的なアプローチにより、症状のない安定した状態を維持することが、現代のクレンチング治療の目標となります。
まとめ

今回は、クレンチング症候群の原因や症状、治す方法について解説をしました。
クレンチング症候群は、ストレスや姿勢、生活習慣など複数の要因が重なって起こる無意識の噛みしめ癖です。
放置すると歯の破折や顎関節の痛みを引き起こすこともありますが、マウスピースやボトックス治療、生活習慣の見直しで改善が可能です。
日常生活の中で「歯を離す」「リラックスする」ことを意識し、違和感を覚えたら早めに歯科医院で相談しましょう。